点検整備記録簿の電子保存の要件とバックアップ|保存期間1年・2年も確認

整備システムで記録簿を作り、そのまま電子データで保存したいという工場が増えています。点検整備記録簿、特定整備記録簿、指定整備記録簿は、国土交通省の取扱いに沿えば電磁的方法で作成・保存できます。ただし、その取扱いにはシステムが講じるべき措置が並んでおり、その一つが「バックアップを行うことによりデータの消失対策を行う」ことです。この記事では、記録簿ごとの保存期間を条文で確かめたうえで、電子保存の遵守事項、整備記録システムに求められる措置、バックアップと乗り換え時のデータの扱いを順に整理します。

点検整備記録簿・特定整備記録簿・指定整備記録簿の保存期間

まず、どの記録簿を何年残すのかを確定させます。根拠はすべて道路運送車両法と自動車点検基準にあります。

記録簿根拠条文記載する人保存期間
点検整備記録簿道路運送車両法 第49条、自動車点検基準 第4条第2項自動車の使用者(実務では依頼を受けた工場が記入)記載の日から1年間または2年間
特定整備記録簿道路運送車両法 第91条第3項自動車特定整備事業者記載の日から2年間
指定整備記録簿道路運送車両法 第94条の6第2項指定自動車整備事業者記載の日から2年間

点検整備記録簿の保存期間は、道路運送車両法第49条第3項で国土交通省令に委ねられ、自動車点検基準第4条第2項が定めています。同条は、第2条第1号から第4号までの自動車は1年間、第5号と第6号の自動車は2年間としています。この号の区分は車種名で分かれているわけではなく、道路運送車両法第48条第1項の点検周期に対応しています。3か月ごとの点検が必要な事業用自動車や車両総重量8トン以上の自家用自動車など、6か月ごとの点検が必要な自家用の貨物自動車やレンタカーなどは1年間です。1年ごとの点検でよい自家用乗用車や軽自動車は2年間です。

一般の整備工場に入庫する車の多くは自家用乗用車と軽自動車なので、記録簿データの大半は2年間、確実に取り出せる状態を保つ必要があります。特定整備記録簿と指定整備記録簿は車の区分にかかわらず2年間です。整備システムの中では、これらの記録が同じデータベースにまとめて入っているのが普通です。

記録簿の保存期間は点検周期で決まる

点検整備記録簿の保存期間は、自動車点検基準第4条第2項により、記載の日から1年間または2年間です。道路運送車両法第48条第1項で3か月点検や6か月点検が必要な事業用自動車、自家用貨物自動車、レンタカーなどは1年間、1年ごとの点検でよい自家用乗用車や軽自動車は2年間です。特定整備記録簿は同法第91条第3項、指定整備記録簿は同法第94条の6第2項で、どちらも記載の日から2年間の保存が義務づけられています。電子で保存する場合も、この期間中は記録を検索して表示し、書面に出せる状態を保たなければならないため、2年分のデータが消えない仕組みが前提になります。

記録簿を電磁的方法で作成・保存するときの遵守事項

国土交通省は「点検整備記録簿、特定整備記録簿及び指定整備記録簿の電磁的方法による作成、保存又は交付に関する取扱い」を公表しています。自動車特定整備事業者と指定自動車整備事業者が記録簿を電子で作成・保存する場合の遵守事項は、次のとおりです。

  • 作成は、スマートフォン等の電子媒体に備えられたファイルに記録する方法、または電磁的記録媒体をもって調製する方法で行う(施行規則第6条)
  • 保存は、そのファイルで保存する方法か、紙の記録簿をスキャナで読み取った電磁的記録を保存する方法のどちらかで行う(施行規則第4条)
  • 直ちに明瞭な状態で、画面への表示と書面の作成ができる措置を講じる(施行規則第4条)
  • 表示または作成される指定整備記録簿は、指定自動車整備事業規則第10条の2に定める様式であること
  • 運輸支局、自動車検査登録事務所、軽自動車検査協会の事務所や支所で検査を受けるときに点検整備記録簿を提示する場合は、書面の記録簿を提示する

取扱いの注記には、自動車特定整備事業者も指定自動車整備事業者も点検整備記録簿の作成義務と保存義務は負っていないと書かれています。それでも使用者から依頼を受けて点検や整備をした場合は工場が記録簿を作るのが通常で、工場が自主的に電子データを保存する場合もあるため、取扱いではそれらを含めて「点検整備記録簿等」と呼んでいます。一方、特定整備記録簿と指定整備記録簿は工場自身に保存義務があります。

見落としやすいのは最後の項目です。検査の窓口で点検整備記録簿を提示する場面では書面が必要なので、電子保存にしても印刷できる環境は残しておきます。プリンタが故障したときの代わりの手段まで決めておくと、検査当日に慌てずに済みます。

電子保存しても窓口では書面を出す

国土交通省の取扱いでは、運輸支局、自動車検査登録事務所、軽自動車検査協会の事務所や支所で検査を受ける際に点検整備記録簿を提示する場合、書面の点検整備記録簿を提示することとされています。電子で作成・保存する工場は、施行規則第4条に基づき、記録を直ちに明瞭な状態で画面に表示し、書面を作成できる措置も講じる必要があります。つまり記録簿の電子化は、紙を一切なくす取り組みというより、保存と検索を電子に移し、必要な場面ですぐ印刷できるようにする取り組みです。整備システムの印刷機能とプリンタは、電子保存に切り替えた後も欠かせない設備として扱ってください。

整備記録システムに求められる措置とバックアップ

同じ取扱いには、整備記録システムで記録簿を電子で作成・保存する場合のガイドラインがあります。データの保全に関する措置は次の5つです。

  1. 点検整備記録簿等の電磁的記録を検索できる措置を講じる
  2. 電磁的記録を電磁的記録媒体に移行できる措置を講じる
  3. 作成、保存、更新、消去の日時、更新した箇所、その作業者を自動的に記録し保存する
  4. ファイルや記録媒体は保管場所を定め、施錠するなどして保管し、不正な改ざんを防ぐ
  5. 保存した電磁的記録は、バックアップを行うことによりデータの消失対策を行うなど安全性を確保する

システムの使い方についても定めがあります。技術面では、自動車検査員(指定工場のみ)、整備主任者、起票と入力のそれぞれの権限について、IDとパスワードによる利用者登録と認証の機能を入れて不正なアクセスを防ぐこと、記載項目と入力権限のエラー検出機能で入力漏れや誤操作を防ぐことが挙げられています。運用面では、管理責任者を定め、IDとパスワードの付与と廃止、記録媒体の使用、保管、搬出入、廃棄の管理を管理規程に書くこと、IDを複数人で共用しないこと、管理規程と操作マニュアルを備え付けることが求められます。

電子保存のガイドラインにはバックアップが明記されている

国土交通省の「点検整備記録簿、特定整備記録簿及び指定整備記録簿の電磁的方法による作成、保存又は交付に関する取扱い」は、整備記録システムで記録簿を電子保存する工場に対し、検索できる措置、記録媒体へ移行できる措置、作成や更新の日時と作業者の自動記録、施錠などによる改ざん防止、そしてバックアップによるデータの消失対策という5つの措置を示しています。紙の記録簿は事務所が無事なら残りますが、電子の記録簿は親機のパソコンが1台壊れるだけで2年分がまとめて読めなくなることがあります。バックアップは電子保存を始める時点で、記録簿の作り方と一緒に用意しておくべき仕組みです。

記録簿データのバックアップで確かめたいこと

ガイドラインはバックアップの方法までは指定していません。そこで、整備工場の実情に合わせて、次の点を確かめておくと安心です。

確かめること理由
記録簿データがバックアップの対象に入っているか顧客台帳や売上だけを対象にしていて、記録簿の明細が外れている構成もあり得るため
バックアップが自動で取られているか人がボタンを押す運用は、忙しい月に抜けやすいため
コピーが事務所の外にもあるか火災、水害、盗難では、事務所内のパソコンと外付けHDDが同時に失われるため
複数の世代を残しているか誤って消した記録や、ランサムウェアで暗号化された状態を上書きで残さないため
戻す手順を担当者以外も知っているか担当者が不在の日に親機が壊れても、検査や問い合わせに対応できるようにするため

記録簿データのバックアップは自動、社外、複数世代で

記録簿を電子保存する工場のバックアップは、自動で取られること、事務所の外にもコピーがあること、複数の世代を残していることの3点で確かめます。国土交通省のガイドラインは方法を指定していませんが、特定整備記録簿と指定整備記録簿は記載の日から2年間の保存が必要で、その間に親機の故障、火災や水害、ランサムウェアのどれが起きても記録を表示し印刷できる状態を保たなければなりません。外付けHDDに手作業で上書きする運用は、取り忘れと、壊れたデータで正常なコピーを上書きしてしまう事故の両方が起きやすく、2年という期間を守るには心もとない方法です。月に一度は、実際に戻せるかどうかも確かめておきます。

事務所の外にもコピーを持つ考え方は、バックアップの3-2-1ルールとして知られています。どのくらいの間隔で、何世代残すかは バックアップの頻度と世代管理 で詳しく整理しています。

日本カーネットでは、整備システム・整備ソフト DREAM POWER をお使いの工場向けに、クラウドバックアップ機能(30日分)をオプションで用意しています。親機のパソコンを起動しておくだけで、システムのデータが暗号化されてクラウドサーバーへ自動で送られ、最新30回分を世代管理します。パソコンが壊れたときは、新しいパソコンに整備システムを入れ、サポート窓口に戻したい時点を伝えれば、顧客、車両、売上、帳票のデータを復元できます。バックアップの対象範囲や実行のタイミングはシステムの構成によって異なるため、記録簿データの扱いも含めて無料相談で確認しています。

特定整備記録簿の写しを電子で交付する場合の手順

特定整備をした工場は、道路運送車両法第91条第2項により、使用者に特定整備記録簿の写しを交付しなければなりません。この写しも電子で交付できますが、取扱いでは次の手順が定められています。

  1. 交付の方法は、工場の電子媒体から使用者の電子媒体へ電子メールなどで送る方法、使用者が工場の管理するウェブサイトやクラウドにアクセスしてダウンロードする方法、データを記録した媒体を手渡す方法のいずれか(施行規則第11条第1項)
  2. 交付したデータは、使用者が出力して書面を作成できるものにする(施行規則第11条第2項)
  3. あらかじめ、どの方法で交付するかを使用者に示し、書面または電磁的方法で承諾を得る(施行規則第12条、政令第2条第1項)
  4. 承諾が得られなかった場合や、承諾の撤回の申出があった場合は、電子で交付してはならない(政令第2条第2項)
  5. 使用者に、データの閲覧方法、画面への表示方法、書面の作成方法などを教える

電子交付に切り替える場合、承諾を得た記録も残しておく必要があります。どのお客様が電子交付に同意し、どのお客様が紙を希望しているかを整備システムの顧客情報に持たせておくと、受付のたびに確認する手間が省けます。この承諾の記録も、記録簿本体と同じく消えては困るデータです。

乗り換えのときに記録簿データを持ち出せるか

ガイドラインが求める「電磁的記録媒体に移行できる措置」は、別の観点からも意味を持ちます。整備システムを入れ替えるとき、直近2年分の記録簿データが旧システムから取り出せなければ、保存期間の途中で記録を参照できなくなるおそれがあります。旧システムを解約せずに残す、紙に印刷して保管するといった対応は、手間も場所も取ります。

日本カーネットが運営するDataPorta(データポルタ)は、整備システムを使うお客様のデータをお客様自身の資産として尊重し、必要なときに返却・移行できることに賛同したシステム会社や団体が掲げるマーク制度です。返却対象データとして、顧客情報、車検証情報にあたる車両情報、伝票と車歴のヘッダー情報、車歴の明細情報の4区分を示しており、車両情報には点検期日や車検期日も含まれます。システムを選ぶとき、このマークは乗り換えの出口が用意されているかを見る手がかりになります。

記録簿データはなくさないことと持ち出せることの両方が要る

記録簿を電子で保存する工場にとって、データの守り方は2つあります。1つはバックアップで、パソコンの故障、水害、ランサムウェアでデータが消えても元に戻せるようにすることです。もう1つは移行で、国土交通省のガイドラインが求める「電磁的記録媒体に移行できる措置」のとおり、システムを替えるときにも記録を取り出して次の環境で読めるようにすることです。特定整備記録簿と指定整備記録簿は記載の日から2年間の保存義務があるため、乗り換えの時期がいつであっても、直近2年分は必ず手元に残り、新しいシステムでも検索と印刷ができる段取りを契約前から組んでおきます。

乗り換えの具体的な進め方は 整備システムの乗り換えとデータ移行の手順、電子帳簿保存法の対象になる請求書や領収書のデータについては 電子帳簿保存法とバックアップ でまとめています。

よくある質問

自家用乗用車の点検整備記録簿は何年保存すればよいですか。
自動車点検基準第4条第2項により、記載の日から2年間です。3か月点検や6か月点検が必要な事業用自動車、自家用貨物自動車、レンタカーなどは1年間です。
特定整備記録簿と指定整備記録簿の保存期間は何年ですか。
どちらも記載の日から2年間です。特定整備記録簿は道路運送車両法第91条第3項、指定整備記録簿は同法第94条の6第2項に定めがあります。
記録簿を電子で保存していれば、継続検査の窓口でもタブレットで見せればよいですか。
国土交通省の取扱いでは、運輸支局、自動車検査登録事務所、軽自動車検査協会で検査を受ける際に点検整備記録簿を提示する場合は書面を提示することとされています。印刷できる環境を残しておいてください。
記録簿の電子保存にバックアップは必要ですか。
国土交通省の取扱いのガイドラインに、保存した電磁的記録はバックアップによりデータの消失対策を行うなど安全性を確保することと書かれています。事務所の外にもコピーを置き、複数の世代を残す構成が安心です。
記録簿の電子保存を考えて整備システムを選ぶとき、何を見ればよいですか。
検索と印刷のしやすさ、権限ごとのIDの分け方、更新履歴の自動記録、バックアップの方式、乗り換え時にデータを取り出せるかを確認します。自動車整備システムや整備ソフトを比較するときは、整備システムの比較サイトも参考にしてください。

出典・参考資料

記載内容は2026年10月6日時点で公表資料を確認したものです。法令の解釈や個別の判断が必要な場合は、専門家または所管官庁にご確認ください。

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